タイでの仕事文化と攻略
今回はタイで仕事を経験して身に染みた、仕事文化と私なりの攻略をご紹介します。
日本以外の国において、女性が強い人が多いのは前提知識ですので、それはあえてここでは省きます。この話題にむやみに触れると、火傷どころか、いや大火事になります・・・
学歴社会と上下関係
どの国でも程度はあればこそ、上下関係や学歴社会が存在します。その関係性はタイのほうがより厳しいと感じました。それは私は各タイ人の学歴や年齢をもちろん知りませんが、彼らのパワーバランスは非常に色濃く日本より明確に分かったからです。
敬称
この関係性が一番わかるのは敬称です。日本では会社により違いますが、一般的に役職で人を呼びます。しかし、タイ人では呼びやすいあだ名で話しかけます。あだ名は”りんご”や”ビール”といった食べ物関係から、バム、ナー、ヌイ、など簡単なものまで。
そのあだ名の前に自分より年齢が上か下か、また関係性が上か下か(全てではありません)で付ける単語が変わります。それが、ピー(年上)、ノーン(年下)で、先に挙げた例では、”ピーバム”といった感じです。
ちなみに私のあだ名が「まっちゃん」。ややこしい?ので、ピー、ノーンは付けられませんでした。
学歴社会というより・・・
例えば、タイ国内トップの大学、チュラロンコン大学(日本の東大)を卒業したあるAさん(30代後半、女)で、役職は課長。
出典:大学公式サイトより
社内では絶大なる力を誇っており、裏での権力者です。英語のメール文面は基本命令形、相手の間違いがたとえ小さくても晒上げ、論理的に変でも押し通す力があります。味方にすればいいのですが、敵にするとヤバい人です。
上述の敬称でいうと、私の知る限り社内の全タイ人はこの御方を必ず”ピー”が付けて呼びます。
また、タイの動作としてよく知られる手の前に合わせるワイ。これは朝目上の人に挨拶するときに見かけます。そう。Aさんはいろんな人からワイをされており、朝はAさん、ワイラッシュ。
お分かりのように、このAさんの性格も大きく左右しているのは明白でしょう。私の会社はどちらかというと都市から離れていますので、この人だけがトップに君臨しています。しかし、バンコクにいけば高学歴の人はたくさんおられるので、違った雰囲気かと思います。
この人の攻略は私の秘密ですが、ここでは教えちゃいましょう。
それは、「教えを乞う方法」です。仕事内容でも、申請関係でもわかりにくい場合にこの人を頼りました。とくに、日本へサンプルを送付する時、自分でパッキングしていたところAさんの仕事に関係なく助けてくれました。
通常タイ人は日本人と違い他部署の仕事に手を貸すことはしません。よく彼らの言い分に「これは、私の部署の仕事ではありません」を聞きます。
なので、Aさんのヘルプは非常にありがたかったです。パッキング部署の人をすぐさま呼びつけ(ここはさすがAサマ。)Aさんも一緒にパッキングの梱包作業を助けてくれました。
私は、この奇跡の思い出を大切にしました。そして、常に彼女へ接する際、とくに議論になるような場合はその思い出を美化しながら恭しくAさんへ接しました。なので仕事上、大きな衝突はなく、Aさんとの仕事をうまくやり遂げました。
上下関係
サプライヤーと客の関係でも上下関係に無茶ぶりが散見されます。例えば、客先から今日連絡があって、「明日中に報告せよ」です。物理的に明日報告が不可能と見えていても、無理してでも「客の言うこと聞け!」という要求です。
日本でも金曜の終業近くに仕事が舞い込んでくることが多いですが、よっぽど緊急でない限り月曜朝提出はありません。業界や仕事にもよるかと思いますが、このタイ人の今日の明日が日常茶飯事です。
そのジャイアン要求にアタフタしているタイ人をよく見かけます。また、そのお返しなのでしょう。その無茶ぶりを次は自分のサプライヤーへ要求しているのも見かけます。お互いサマサマです。
この話は以前に記載した、いわゆる「時間感覚が緩い」ことに原因があるかもしれません。締め切りに対する時間感覚が弱く、どうしようもない場面になって始めて明日まで・・・ということに。この上下関係と学歴社会は外面のほほんタイ人からあまり見えない部分だと思います。
この攻略は、遅れてもいちいち気にしない、遅れる前提の計画が一番です。
信仰心
タイは90%以上が上座部仏教、また土地の精霊信仰が根強く、生活、会社にも色濃く関連しています。
仏教関連
会社へ僧侶が数名設立記念日などに来社されます。そこで、タンブン(寄進)をして、読経やお清めの水をかけて頂きます。
タイの祝日は仏教に関連したものが多く直近5月26日は仏誕節(ヴィサカ・ブーチャ)と呼ばれる、お釈迦様の生誕日を祝いました。人によっては、仏日には仏教戒律の一つ殺生を禁じ、魚と肉を食べず野菜のみの食事にします。その日のみベジタリアンの私と同じメニューです。
精霊信仰
必ずと言っていいほど、会社や家やお店にある小さな祠。これは仏教とは別に、土地の精霊を奉っているようです。
写真は会社にある祠
近くのスーパーにある祠
果物や飲み物などをお供えします。
従業員の中でも、出社退社時にこの祠へ向けてワイ(一礼)をする信仰心の強い人もおられます。
仕事上での注意事項
日本でも最近はパワハラ事例と言われますが、タイを始め諸外国で人前での叱責はその人のプライドを傷つけるので、要注意です。ただし最初の事例で取り上げた、誰よりも上に君臨する、Aさんは例外。
また、日本人はすぐに謝るという世界的に知られた文化がありますが、逆にタイ人失敗を認めません。これは、プライドが高いというのもあります。
つい失敗を追及したくなりますが、人前では堪えるか、その人しかいない場面で話すしかありません。指し違えると「人前で恥をかけられた」と激昂し、どこからか銃を持ち出し騒ぎ出すニュースもたまーに見かけますので、細心の注意が必要です。
タイ人と日本人の英語
以上の恐ろしい?仕事文化から、少し楽しい話題へ。
私の通常仕事でタイ人との使用言語は簡単なタイ語、詳細は英語と、どちらかというと、英語の使用頻度のほうが多い状況です。もちろんお互いネイティブではありません。私の日本人訛りの英語があるのと同様にタイ人にも訛りがあります。お互いに母国語の影響によるものですが、タイ人の特徴は単語でも後ろのほうにアクセントを持ってくること。
例:December 12月、発音記号のアクセント位置は真ん中disémbərですが、タイ人はディセンバー、と後ろにアクセントを持ってきます。
読むより聞くべし。タイ人と日本人の英語発音を如実に面白く紹介されているYoutubeをご紹介します。タイに7年ほど仕事経験のあるYoutuberのDaijiroさん。
この方は、イギリス英語、アメリカ英語を始め、インド英語や香港英語まで面白く紹介されていますので、お笑い動画としてご興味があれば、ぜひ他の動画もご視聴してみてください。
空気を読む力の鍛錬
今回ご紹介事例のような「仕事文化」は程度や内容に差はあるものの、もちろん日本の仕事文化、各会社の文化が存在します。
仕事トラブルを引き起さぬよう、言葉に表せない「タイ特有、会社特有の空気を読む」のが重要です。もちろん、本や知識で知っていても実情は違うことが多々ありますが、誰も教えてくれません。恥ずかしながら、あまり空気を読むことを重要視してこなかった私は、タイで仕事するなかで読む力を鍛えられ、”適当に”適用させてきました。
外国人で自分の希望でタイへ来て、仕事していますからね。自分がタイの仕事文化に合わせるべきだと思って仕事しました。
私にとって、この「空気読んで、適応させる鍛錬」がタイで仕事した一番の収穫かもしれません。