ほぼ日曜週刊タイ生活

タイ生活とタイ国内旅行を楽しく

タイマインドとその影響

最近のブログ記事では日々の生活のツッコミや、旬な話題に「タイらしさ」が垣間見えたかと思いますが、今回もそんな事例を。

 

ただし今回は旅行者として一時的にその国を見る表層面だけでなく、外国人として生活したからこそ見えてきた、少し深い視点から「日本人から見たタイ人マインド」をご紹介します。もちろん私目線であり、タイの全てを理解して見えているわけではないことは、事前にお断りしておきます。

 

今回は文字が多いブログ記事ですので、読み物としてお読みください。

 

 

18種類の性別

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一般的にLGBTQと呼ばれる、セクシャルマイノリティーが知られていますが、タイでは性別を18種類あるとされ、それぞれに名前があります。一例としては、トム(男装をした女性、いわゆる宝塚)、ゲイクイーン(男性が好きな女らしいゲイ)、ゲイキング(男性が好きな男らしいゲイ)など。趣味嗜好や外装で分類されているようです。

 

この内容を知識として知っていましたが、実際驚いたのは職場にもおられたこと。先の写真のように18の性別区分があるとはいえ、トイレは男女の「2か所」しか分かれていません。私はそれまで「男性」と思っていた人と女子トイレで会い、あとで他の人に聞いてトムであることを知りました。しかも、社内ではトップ5本の指に入る地位のうち、2名がトム(男装した女性、日本の宝塚)で既婚者です。

 

このような性別の多様性は会社だけでなく、お店や街中でも見かけます。最近ではゲイのドラマが人気だとか。これらの背景としては、男性は徴兵制を逃れるためであったり、おおらかなタイ人による広く受け入れる性格もあるのではないかと、勝手に想像します。まあ、性別に関しても細かいことは考えなくてもいいのよ、というマインドです。

 

ゆるーい時間感覚

1分でも電車が遅れると謝る日本で育ち、性格上でも時間感覚に厳しい私は、とくに海外のゆるい時間感覚は「文化の多様性」と言い聞かせてきました。

 

写真はバンコクより北のアユタヤの国鉄。通常通り、約2時間遅れで到着した電車。待ち疲れました。

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仕事ですら15分遅れは当たり前、プライベートでも集合時間に「家を出て今から向かう」、そもそも約束すら忘れることは日常茶飯事、これらはタイで「普通」な感覚です。これももちろん知っていましたが、「なぜこの時間感覚になるのか。」という理由をタイ生活のなかで考察しました。

 

理由その1:時間通りに動くことができない

よく南国ではスコールと呼ばれる一時的な大雨が降り、道が冠水します。そもそも雨の時は移動も憚られますし、その後も道は渋滞したり冠水により迂回することになります。実際、通勤途中での大雨は渋滞やら迂回で始業時間に遅れることも多々。これは私の住む田舎だけでなく、バンコクですらよく冠水しています。

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とくに雨季は、この気候条件がひどくなります。タイの気象庁は今週末から雨季に入るといわれていますので、これから時間を守らない理由がより一層強くなります。

 

一例として、私はベッドのシーツはクリーニング屋に頼んでいますが、「大雨で」引き取り・配達が時間通りにできないという理由を言われたことがあります。これからこの理由を使われるでしょう。

 

理由その2:そもそも急がない

これは歩く速度にも表れます。年中暑い季節ですので、汗をかきたくないというのも一つと思いますが、タイ人は「歩く速度がやたら遅い」です。私が前を歩く人の靴を踏みつけたことは数回・・・。

 

都会のバンコクですら、歩く速度は総じて遅いです。顕著に感じたのはバンコクで電車が到着しそうな時、急ぎたいのに前の人が急がない。また降車する速度も遅いので、当たりそうになることが多いのは、私だけでしょうか。これは、時間を急ぐ感覚が無いからこそ、時間に遅れるのでしょう。

 

これは蚊ですら影響しています。タイの蚊は日本の蚊より動きが鈍く、簡単に仕留めることができます。残念ながら、私の素晴らしい動体視力の所以ではなく、日本から来た人は総じて「蚊の動きが遅い」と感じるそうです。

 

ただし例外として、タイ人が驚くほど機敏に動く時間があります。それは帰社、ご飯、おやつの時間。チャイムに忠実に、急ぎ足で動くのを見ると「分かりやすいなあ。」と。

 

なんとかなるなる

「マイペンライ」というタイ語は有名です。代表的な意味の一つとして、「なんとかなるなる」です。言葉は違えど南国地域各国にこの意味の言葉は存在し、日常で多用されます。

 

これはタイの田舎へ旅行して、この気持が非常に理解できました。タイは年中暖かく雨も適切に恵まれ、果物や野菜はそこまで気にしなくても勝手にいつでも育ちます。事実、タイ人から家や田舎で採れて大量に余った果物をお裾分けしてもらいます。

 

また、寒くないので服も軽装で済みますし、年中外で寝てても凍死することはないでしょう(たぶん)。

 

タイ北部へ移動の飛行機より。この緑豊かな眺めがずーーーっと続く。

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つまり、「何か失敗してたとえ職を失っても、田舎に行けば、食べ物も野宿してでも生きていける」から「なんとかなるなる」が根本にあると言えます。

 

逆にこれは地球でも北半球へ行けばいくほど、これはありえない感覚でしょう。とくに日本は四季があるからこそ、そのタイミングを見計らって作物の収穫が必須であり、それがあるからこその、日本人の厳しい時間感覚に繋がると思います。

 

また製造業に従事してとくに感じてきたことですが、一概にして「資源を持たない北半球の国だからこそ、産業が発展する」ところまで関係すると思います。とくに日本は鉱山資源の恩恵が少なく、移り替わる気候で時間感覚に厳しいからこそ、製造業を産出してきたことに繋がるのでは。

 

南国地域発祥の製造業で世界にまで拡大した企業、タイは皆無かと。ただし私の知識不足で、もし世界的なタイ発祥の製造企業がありましたら、大変すいません。

 

目指すは、ほどほど

日本には匠と呼ばれる人が多く存在します。彼らは常により上を目指した鍛錬を怠らない職人たちです。私はいろいろなものに手を出す、広く浅い経験と知識の人なので、こういう方々には尊敬の念でいっぱいです。

 

一方タイでは、より上を目指すのではなく、合格点であれば良し、むしろ「ほどほど」を目指す傾向にあります。

 

これは私の住むコンドミニアムの廊下上の写真。

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ちなみに、これで工事は終了しています。

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このような目視でも見える隙間は会社やお店やら至るところにあります。とりあえず、塞ぐ目的を終えれば完了なのでしょう。

 

一方日本では左官と呼ばれる、建物の壁などを道具を使い「塗る」技術の人がおられます。もし左官がこの仕上がりを見たら、大きなツッコミを入れてくれるだろうと勝手に想像します。

 

先の目的に関して、タイ人の仕事事例としては、改善目標値は確実に実現可能なところに設定し、少し上を目指そうとしません。もう少し追加すると、さらに大幅に達成するのにも関わらず、そこで終わろうとします。

 

また期日に遅れるのを当然とする傾向があります。これは、期日より早く終えるとさらに仕事が増えるからです。なので、ゆっくりとタスクをこなし、目指すは平均点、ゆるい時間感覚も相まって、のんびり作業は多く見受けます。

 

日本のように、早く正確を極め、さらなる仕事を集めていくバリバリ生活のほうが良いのか、ほどほどを目指すのがいいのか。自分は何を目指し、その過程をどう過ごすのかなのでしょう。

 

タイマインドを受けた影響

これらのタイ文化を目の当たりにして、私が変わったといえるのは「適当さ」のレベルをほどほどに意識していることです。性別の区別すら気にしない国ですので。

 

日本では、高く遠い目標を目指した日々を生活してきました。その反面として、精神や体調に影響も受けることがあり、そのたびに自分が足りないのだと思ってきました。

 

このタイ人マインドを接するうち、考えは変わったように思います。そもそも、上を目指すのは無限であり終わりは無いなので、どこまで自分の目標として、ほどほどにするのか、いわゆる「適当さ」を見極めるようにしています。

 

とはいえ、目標を平均点にするとそれ以上の景色を見えなくなりがちですので、上は目指すけれど「適当さはどこか」を意識します。

 

この適当さは、ブログ名「ほぼ」にも込められています。週刊とはいえ、できないこともあるよね、を含んでいます。といっても、今年に入り「週刊」は継続できていますので、上を目指す気持ちは引き続き持ちながら、適当にブログを続けていきたいと、毎日先ほどの廊下上の適当な隙間を見ながら思っています。